2020/09から柏の葉で実証実験されている「三井住友不動産」の移動手段を一括するMaaSのサービスで外出する人が半数以上増えたことがわかりました。
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毎月定額でタクシー、バス、クルマ、自転車が利用可に
三井不動産は2020年12月15日(火)、ヒト・モノ・サービスの「移動」に着目したモビリティ領域への取り組みを開始すると発表しました。「MaaS(マース)」と「移動商業」の2本柱で実証実験を進めていくといいます。
MaaSは「Mobility as a Service」の略称で、バラバラである交通機関をひとつのサービスとして捉え、シームレスにつなぐ、といった移動の概念です。観光地で回遊性向上を狙ってMaaSの試行が実施されている例がありますが、三井不動産によるMaaSの舞台は「街」です。柏の葉(千葉県柏市)、豊洲(東京都江東区)、そして三井のお膝元である日本橋(同・中央区)という特徴の異なる各エリアで実証実験が展開されます。
サービスは、毎月定額でタクシー、バス、カーシェア、シェアサイクルが使えるようになるというもの。プランは月1万円、5000円、2000円の3種類で、2割上乗せされた金額分(1万円のプランだと1万2000円分)の範囲内で、交通サービスの利用が可能になります。都度払いは不要で、移動手段の検索、ルート・手段の選択、予約、決済はスマートフォンのアプリで完結します。
同社が「都市近郊型」と位置付ける柏の葉では9月から実験中。参加者の約7割はマイカーを所有していませんが、MaaSの利用で「初めての場所への外出」や「外出」そのものが増えたと、いずれも半数近くが回答したといいます。
なぜ不動産が「移動」をやるのか
不動産は言葉のとおり「動かない」商品を扱っていますが、今回は「動く」領域の取り組みを始めるとのこと。なぜ不動産が今モビリティに着目するのか――その答えは「生活のボーダーレス化」にありました。
三井不動産ビジネスイノベーション推進部の須永 尚部長は「生活は家、仕事は職場、買い物は店……といった場所・空間の概念や使い方が、コロナ禍を契機にボーダーレス化しています」と記者説明会で話します。
例えば生活だと多拠点生活や、仕事と生活を合わせたワーケーションが認知され、仕事の場もカフェやシェアオフィス、自宅など選択肢が増えていることが挙げられます。このような暮らし方や働き方の多様化、ライフスタイルの変化が加速していることを踏まえ、「不動産」と「移動」を組み合わせた新たな体験価値を提供するといいます。
MaaSも、その体験価値を生み出すものの一つです。「移動の自由」を用意することで、街全体の魅力を底上げする狙いがあります。住民にとっては「どこで・何をするか」をより能動的に選べる生活になると説明しています。
実証実験は、柏の葉が2021年1月末まで、「都心型」の日本橋は12月15日(火)から2021年3月末まで、「準都心型」の豊洲は12月21日(月)から2021年3月末までの予定で、それぞれ指定のマンション住民を対象に行われます。
人が移動するMaaSとともに、モノ・サービスが移動する「移動商業」の実証実験も並行して実施されます。飲食をはじめ、マッサージや靴磨きといったサービス、そして物販の事業者に店舗用の自動車を貸し、売れる曜日・時間・場所を調整することで収益を効率的に伸ばすことを狙います。
同社は「移動式サービスによる不動産の移動産化」と表現し、ビジネスイノベーション推進部の後藤遼一主事は「従来“動かない床”を貸してきたが、今回はいわば“動く床”を貸す」と説明。車両リースと出店料で収益を確保しつつ、住民・客には「思いがけない店舗(コンテンツ)との出会いを創出したい」と事業の意図や狙いを話しています。
交通手段は丸ごと定額 店舗は「移動産」に 三井不動産の新構想で街はどう変わる?