柏レイソルで土台を作り今季限りで現役を引退したJ1北海道コンサドーレ札幌DF石川直樹選手が第二の人生を歩むために「プロフェッショナル心理カウンセラーの資格」を取得しました。
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今季限りで現役を引退したJ1北海道コンサドーレ札幌DF石川直樹(35)が、選手のメンタルケアを第2の人生に選んだ。2013年に新潟から仙台へ移籍した際、主力としての重圧に苦しんだ経験から18年オフに決意。246時間の勉強と試験を経て、今月、プロフェッショナル心理カウンセラーの資格を得た。来年から踏み出す新たな人生に向けた思いを、スポーツ報知の単独取材で語った。(取材・砂田 秀人)
第2の人生への思いを語る石川の表情は、どこまでも穏やかだった。
「これまではサッカー選手ということで守られてきた部分がある。これからは石川直樹じゃなきゃダメと思われるように自分自身の価値を高めて、それを仕事に生かしたかった。それが見つかって、今は久々に心からワクワクしてます」
引退後に選んだ職種はメンタルケア。札幌からは指導者などへの転身も薦められたが、違う道を選んだ。
「これまで前例がないから正直、道筋は見えない。希望はすごくあるけど、家族もいるし、金銭面の不安は当然ある。ただ3年後、自分がどうありたいか考えると、今は外に出て色々勉強しようと。自分のような思いをする選手を1人でも減らしたいと思ってるので」
13年、新潟から仙台に完全移籍。ACL出場を控えたチームの誘いを意気に感じての移籍も、主力として迎えられた重圧が、石川の心に変調をきたした。
「即戦力として入ったので、出来て当たり前、みんなよりうまくないといけないと。その思いにとらわれ過ぎて、キャンプから状態が上がって来ない。新潟では自信満々にやってたのに、ボールを持つのすら怖くなった。それでも開幕から起用されたが、近くの選手を選んでパスをして、ただこなすだけ。ベンチにいる選手の方がいい状態なのに、自分が使われるのがまた辛くて。1週間、全く寝られなくなった。仲間に言える訳もなく、フィットするまで1年半かかった。それがずっと頭にあった。18年オフから引退後について考えてきた時、自分は時間が解決してくれるのを待つだけだったが、寄り添える人がいればその時間も短くなり、自分自身を知るきっかけになるかもしれない。僕のような子を増やしたくないと思って、これがやりたいことなんだなと」
仙台のチーム内講義を聞いてから親交のあったアイディアヒューマンサポートサービス(本社・東京)の薦めで、資格取得の勉強を開始。週に2〜3日、午後7時から2時間、心理学などの講義やカウンセリングの実技を計246時間受講。18年オフから約2年かかったが、1次筆記試験、2次実技試験を経て今月、現役Jリーガーとして初めて、プロフェッショナル心理カウンセラーの資格を得た。
「練習で疲れて『今日は7時から講義か』と思った時もあるけど、将来ある人をサポートしたいという思いは変わらなかった。資格も得て、今やりたいのは3つ。サッカー以外の色んな世界の人に出会って見聞を広げる。海外に行く。日本でアスリートを支援する。それを将来、コンサドーレ、ひいてはサッカー界のために少しでも還元できれば」
東京五輪を目指す他競技の選手のメンタルトレーニングチームの一員に加わることが決定。選手の精神的サポートの一助を務める。9月からは欧州4大リーグの1部クラブに赴き、実地勉強する手はずも整えた。貯金を切り崩しながらの1年も、明確なビジョンがあるから苦には感じていない。
「メンタルと聞くと『何か信用できない』と思う人もいるかもしれないが、こういう世界もあると気付けてもらえれば。もっと肩の力を抜いて楽に生きられるサポートをしてくれる人がいるんだと知ってもらいたい。今思うと、サッカー選手は人生の中間目標だったんだなと。選手だったからこそ次の人生が見つかり、心残りなくいきたいと思った。これからは目標の続きに向かって進んでいきます」
◆石川 直樹(いしかわ・なおき)1985年9月13日生まれ、千葉県柏市出身。柏ユースから2004年、トップ昇格。05年10月23日のアウェー・川崎戦でJ初出場。09年7月にJ2札幌へ期限付き移籍し、11年にJ1新潟、13年にJ1仙台へ完全移籍後、17年7月に完全移籍で札幌へ再加入。今年12月5日のホーム・C大阪戦が現役最後の試合となった。J1通算264試合11得点、J2通算66試合出場3得点。家族は妻と男児2人。180センチ、74キロ。左利き。背番号2。
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